
しょうぶ苑(有限会社九州松栄産業)
https://shoubuen.com/
事業内容:介護施設運営事業、在宅サービス事業、保育園運営、介護スクール事業
九州松栄産業は熊本を拠点とし、江津しょうぶ苑、黒髪しょうぶ苑、水前寺しょうぶ苑の3つの介護施設の運営を中心に、訪問介護事業や介護スクール事業などを手がけている。社員数約460名、2025年には設立40年を迎えた。
AIDによるご支援の概要
2024年からご支援を開始。介護事業者の最大の課題である転倒事故を防止する取り組みを継続。1年強にわたり、ほぼ毎月システムをご提供し続け、累計16システム、カメラ200台以上が現在稼働中。
成果
- カメラ×AIシステム導入で、入居者様の転倒事故を3分の1削減することができた。
- 夜勤スタッフの負担が30%以上削減され、疲労軽減と働きやすさの改善が進み、離職者が減った。
- 自社で運営する転倒防止の仕組みを新規事業として全国の介護事業者へ提供することで、介護保険に頼らない事業体制の実現が見えてきた。
介護保険に頼らない事業体制を実現したい
AIDへご依頼いただく前は、どのような課題があったのでしょうか?
専務取締役 合志明展さん
これまで20年間、介護事業を手がけるなかで、「介護保険に頼らない事業体制が必要だ」と強く感じてきました。介護事業はどうしても制度や政策に左右される事業です。近年、倒産件数も増えており、2025年には過去最多を更新しました。介護保険収入に依存していると賃上げも難しく、人手不足が深刻化する中で、事業運営はますます厳しくなっていきます。
保険外収入を増やすべく、介護付き宿泊事業や高齢者向けの旅行事業など、これまでさまざまな新規事業を検討してきました。「介護保険に左右されにくい、大きな柱となる事業を育てたい」そう考え続けてきたなかで出会ったのが、この転倒防止の取り組みでした。

介護事業で発生する事故の66%は入居者様の転倒、これを解決したかった
江津しょうぶ苑 苑長 渡邉康一朗さん
2023年の夏、現場の困りごとを40個ほど洗い出しました。その過程で、行政に提出した事故報告書を分析したところ約68%が入居者様の転倒事故であることがわかりました。さらに全国の介護事業者の統計を確認すると、ほぼ同じ割合でした。つまり、転倒事故は当苑だけの問題ではなく、すべての介護事業者に共通する、そして最大の課題だとわかったのです。
高齢者が一度転倒してしまうと、ケガのリスクがあることはもちろん、その後の日常生活動作(ADL)に支障をきたしてしまいます。ADLの低下は高齢者にとって生活の質(QOL)への影響が大きく、心身両面の負担につながります。また転倒を防ぐためには、介護スタッフによる見守り業務が欠かせませんが、その負担も大きいのが現状です。こうしたことから『転倒防止』は高齢者ご本人にとっても、介護現場で働く職員にとっても、早急に解決すべき重要な課題だと強く認識しました。
そこで、転倒事故に狙いを定め、『転倒をどこまで減らせるか』というチャレンジに取り組み始めました。

誤検知で当てにならず、「18秒」では間に合わない
AIDにお声がけいただいた経緯を教えてください
苑長 渡邉さん
以前は、赤外線センサーを使っていました。その後、床置きタイプのマットセンサー、ベッドに入れるマットセンサーなど、さまざまな解決策を試してきたのですが、『転倒事故を防止する』という点では、どれも決め手に欠けていました。
赤外線センサーは、入居者の方がベッドに座ったときに通知音が鳴る仕組みです。ところが実際には、職員が見に行ってみると「布団が落ちただけ」「寝ている間に足が出ただけ」といった誤検知が多く、職員にとっては次第に「当てにならない」ものになっていました。一方で、なんとかギリギリ間に合うこともあれば、間に合わず、すでに立ち上がってしまっていることもあり、本当に防ぎたい転倒リスクに十分に対応できているとは言えませんでした。
床置きタイプのマットセンサーが検知できるのは、入居者の方がすでに立ち上がった後です。センサーが鳴ってから職員が居室に到着するまでに平均18秒かかるため、たとえ事故には至らなかったとしても間に合わない場面もありました。そのため当苑が目指す『転倒防止』という観点では課題が残ると感じていました。
マットセンサーをベッドに入れるタイプでは、寝返りだけでも検知してしまい、実際に起き上がろうとしているかどうかは、職員が訪室してみないとわかりませんでした。
結局、実際には見に行ってみないと状況がわからないため、センサーが鳴るたびに訪室を繰り返すことになり、夜勤スタッフにとって負担が大きくなっていました。
事業開発部 事業開発室 副所長 渡邊亨さん
また、どの部屋で鳴っているかをセンサーの音だけで聞き分けなければならないことも、職員にとって大きな負担でした。約150人の職員が新しいユニットに配属されるたびに、まず音を聞き分けて覚える必要がありました。そのうえ、ベテラン職員と新人職員とでは音を聞き分けてから部屋に向かうまでのスピードに差が出てしまい、誰でも同じように対応できる状況とは言えませんでした。
生体情報を確認できる製品も試してみましたが、全国の介護事業者が抱える課題を解決したいと考えていたため、既存のアプローチではなく、根本的な解決策を探し続けていました。

「AIでも無理」と言われ、途方に暮れていた
AIDに決めたポイントを教えてください
ケアテックスなどの展示会で多くのベンダー各社のブースや製品を見学しましたが、誤検知の多さはこれまでのソリューションと変わらない印象でした。その後、熊本県のアクセラレーションプログラムに参加し、多くのスタートアップ企業の皆様からも提案を受けました。その中には、加速度センサーやミリ波レーダーを使ったソリューションなどもありましたが、いずれも事後の状況分析や対策検討を主な目的としたものが多く、私たちが目指す転倒の「防止」に効く解決策は見つかりませんでした。
転倒を防止するためには、立ち上がってから検知していては間に合いません。立ち上がろうとしている動きやベッドの中での「もぞもぞ」を検知する必要がありました。そこで、この判断にAIを使えないかと考え、専門家に相談し一緒に研究しましたが、結論としては「ハードルが高く、現実的には無理」と言われてしまったのです。
そんな中で、AID社をご紹介いただき、オンライン会議でお話を聞いてみることにしました。
「できると思います」から1ヶ月で効果を実感
今でもよく覚えているのですが、初回打ち合わせでこれまでの経緯と私たちの悩みをお伝えしたところ、石川さん(株式会社AID 代表取締役)から「ハードルは低いです」「できると思います」と声をかけていただきました。それまでずっと、他社からは「ハードルが高いですね」「それは無理だと思います」と言われ続けてきましたから、本当に驚きました。
AID社はパッケージをそのまま提供するのではなく、私たちの状況に合わせて個別に対応していただける柔軟性もあり「一緒にやってくれるパートナー」だと感じました。私たちは途方に暮れていましたので、救世主だと思いましたね(笑)
さらに驚いたのは、その後のスピード感です。「まずは小さく試してみましょう」と提案していただき、初回ミーティングからわずか1ヶ月で、中古PCと安価なカメラを使ったお試しシステムを納品していただきました。
訪室までの時間を11秒短縮、夜間の転倒を3分の1削減できた
AI+カメラシステムを導入した結果はいかがでしたか?
私たちの念願だった「もぞもぞ」を検知できるようになり、入居者さんが起き上がる前に間に合うようになりました。以前よりも11秒早く居室に行けるようになったことで、起き上がりの介助ができ、明らかに転倒を防げているという実感があります。

効果は、数字にもはっきり表れています。カメラ×AIシステムを導入した居室では、夜間の転倒発生を3分の1削減することができました。

夜間スタッフの負荷も減少。夜勤中でも休憩を取れ、離職も減少
夜勤スタッフの負荷も明確に減っています。誤検知が多かったころは、センサーが鳴るたびに見に行く回数は10回程度でしたが、それが7回、5回と確実に減っています。夜勤中の歩数を計測しているスタッフによると、以前は1万歩以上歩いていたのですが、今は無駄な訪室がほとんどなくなったことで、平均5,000歩以下となり、少ないときでは3,000歩を切っています。これまでは夜勤中に休憩を取ることすら難しかったのですが、今は夜勤中でもしっかり休憩を取れるようになり、疲労の軽減や働きやすさの改善につながっています。その結果、離職も減少しています。

カメラ映像で判断がしやすく、巡回中も他部屋の状況を確認できる
これまでの赤外線カメラではモノクロ(白黒)画像で見づらく、距離感もわかりにくかったため、状況の判断が難しいことがありました。それがカラー画面になったことで、映像が格段に見やすくなり、判断もしやすくなりました。また、どの部屋で反応しているかが、画面上で視覚的にわかりやすく表示されるため、職員からの評判も良いですね。以前は、ひとりで夜勤をしていると巡回中に他の部屋の様子がわからなかったのですが、今はタブレットを持って巡回することで他の部屋の様子を同時に確認できるようになり、とても便利です。

対応品質が向上し、入居者様やご家族様に安心してご利用いただけるように
さらに、対応品質の向上にもつながっています。通知がわかりやすく、画面も見やすくなったことで、新人職員や外国人職員であっても、ベテランと同じような判断ができるようになりました。画面を見て「この動きは寝返りだから大丈夫」といった判断がしやすくなったのです。また、ベテラン職員が後から録画を確認することで、新人に対して適切な指導をできるようにもなりました。録画が残っていることで、的確な再発防止策を検討できますし、ご家族様にも具体的な状況をお伝えすることができます。これまで以上に、入居者様やご家族様に安心してご利用いただけるようになりました。

細かな相談ができ、テンポよく進められるので、早く進めたい私たちに合っている
AIDとプロジェクトを進めてきた感想を教えてください
苑長 渡邉さん
いろいろな会社さんとやり取りしてきましたが、見積もりから契約までに1ヶ月ほど掛かってしまうのが通常です。その点、AIDさんは1週間でスタートできて、1ヶ月あれば利用開始まで進められます。この対応の速さは、私たちのように「とにかく早く進めたい」タイプの会社に、とても合っていると感じています。
副所長 渡邊さん
入居者様の状況や居室の環境はさまざまですから、誤検知を減らすためのチューニングや、現場での使い勝手を高めるための調整は欠かせません。カメラやAIだけでなく、ネットワークや機器の設定など、私たちが得意ではない部分も含めて、石川さんには細かな相談に乗っていただけるので、とても助かっています。また、中古PCを活用するといった現実的で負担の少ない提案をしていただける点も大変ありがたく感じています。
今後、当社へ期待することを教えてください
専務取締役 合志さん
当苑ではすでに明確な効果が出ていますので、次はこの転倒防止ソリューションを事業として展開していきます。現在、実証実験を進めているところですが、これから多くの介護事業者さんへ展開していくにあたり、AIDさんには協業パートナーとして引き続き密な連携をお願いしたいと思っています。入居者様とご家族様の安心はもちろん、現場で働く職員が長く安心して働き続けられる仕組みとして、AIDさんと共に育てていきたいと考えています。

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