新規事業における「PoC仕様定義の壁」を越え、万博でのAI自律制御運用という実績を作れました

三菱電機株式会社
https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/

FA(ファクトリーオートメーション)やパワーデバイス、空調・ビルシステムなどを中核とする総合電機メーカー。世界94か国の製造現場にFA(ファクトリーオートメーション)機器を提供し続け、業界トップシェアを誇る。連結従業員数約14万6千人。

AIDによるご支援の概要

名古屋製作所が推進するオープンイノベーションによる新規事業創出の一貫であるIoTグリーンシェード事業に2022年から参画。2022年、京都府「けいはんな記念公園」、大阪府「うめきた外庭SQUARE」でのPoCを皮切りに、2023年恵比寿、2024年新東名高速道路岡崎SAでのPoCをご支援。2025年大阪・関西万博での展示をご支援。 

成果

  • 生成AIによる植物育成や快適・涼空間演出の自律制御システムを構築し、万博会期中約6ヶ月間の連続運用を実現
  • AIが自律判断・運営し続ける長期実証という世界でも類を見ない実績を創出 
  • 新規事業創出に不可欠な「短期間でのPoCサイクル」を実現し、2022年から計4回のPoCを成功裏に完遂

新規事業創出へ挑戦するオープンイノベーション推進部

名古屋製作所が進める新規事業創出活動と、オープンイノベーション推進部の役割を教えてください

オープンイノベーション推進部事業企画グループ 白井靖士さん

名古屋製作所は、FA(ファクトリーオートメーション)システム事業の開発・生産を担う中核製作所であり、同社のFA事業の“心臓部”ともいえる拠点です。FA事業では、製造の自動化や品質・生産性の向上を実現するソリューションをグローバルに提供しています。

その中で、オープンイノベーション推進部は、両利きの経営で言うところの「新規事業の探索」を推進する役割を担っています。既存事業をさらに強くしつつ、イノベーションによって新たな成長事業を見つけ出すことを目指しています。2019年からアクセラレーションプログラムを開催したり、愛知県企業と全国のスタートアップとのビジネスマッチングプログラムである「Aichi Matching」にも参加したりするなど、積極的に共創パートナーを募り、新規事業創出を目指してきました  

オープンイノベーション推進部事業企画グループ 柴田実香さん

私たちが所属する事業企画グループは、新規事業創出の0→1を作る部分を担当しています。農業、食品、物流、ゲームといった異分野・異業種と、私たちが得意とするFAを掛け合わせることで、新規事業創出を目指しています。 


PoCを重ね、IoTグリーンシェードを万博展示へ

白井さん

IGSは当初、単に日陰を作る目的でしたが、2022年には人を集めるソリューションへ方向転換(ピボット)しました。AIDさんの協力を得て、京都府けいはんな記念公園、大阪府うめきた外庭SQUARE(2022年)、恵比寿(2023年)、新東名高速道路岡崎SA(2024年)などでPoCを実施しました,。特に岡崎SAでは、IGS設置による周辺店舗の経済効果を人流解析を用いて検証しました。このPoCを重ねる頃には、2025年4月から10月まで開催される大阪・関西万博にIGSを展示することが決定していました。


万博展示に向けた課題:生成AIによる自律制御という未知への挑戦

万博での展示に向けて苦労されたことは何でしたか?

白井さん

万博での展示にあたり、IGSは従来のプログラミング制御から、生成AIを使った自律制御で植物を育成するシステムへと大きく変更しました。しかし、アイデアはあっても、生成AIを使ってどのようにシステムを構築すればいいのか、私たちが持っているセンサーやカメラ、制御機器をどこに設置し、どう繋げればいいのか、生成AIの部分をどう見える化すればいいか、すべてが手探りの状態でした。

万博開幕という期限が決まっており、システム完成に向けて切羽詰まっていたところがありました。


仕様書ではなく、相談ベースから会話できるので助かった

白井さん

新規事業を立ち上げる際、新しい取り組みであればあるほど、「これをどうシステムとして実現するか」「パートナー企業にどんな情報を渡せばいいか」が大きな壁となっていました。
実は、一般的に社内の専門部署や他の企業様にご相談すると、まず「仕様書や要件定義書を出してほしい」「仕様書までいかずとも、紙にまとめてほしい」と言われることが多かったのです。システム構築の経験が少ない私たちからすると、何をどう書けばいいのかすらわからず、正直、プロジェクトの推進に手間取ってしまう状況でした。

そんな中、AIDは全く違うアプローチを取ってくれました。

AIDは、そうした状況に対し、会話ベースから相談に乗って要件を引き出してもらえるため助かりました。私たちのやりたいことを相談ベースで受け止め、要件定義からシステム構築まで早く進められました。技術的な知見がない私たちに対しても、素人でもわかるようにシステム構築の提案や説明をしてもらえました。 

柴田さん

定例会などでやりたいことを相談すると、AIDはレスポンスが早く、すぐに対策や実行案を提示してくれたため、万博開幕という期限が決まったプロジェクトをスピーディに推進する上で心強かったです。

また、私たちが考えた案が最適解とは限らない中で、AIDは専門的な視点から、比較検討が可能な第2案や第3案といった別案を提案してくれたため、最適な判断を下しやすくなりました。

特に、システムやクラウドの知識がない担当者に対し、AWSのサービスを使った構成案などを分かりやすく示してもらえたことは非常に助かりました。 


半年間にわたる、AIによる自律運用という世界でも希少な実績を創出

AI+カメラシステムを導入した結果はいかがでしたか?

白井さん

万博で導入したシステムは、生成AIを用いて植物育成や快適・涼空間演出を自律的に制御するもので、PLCからクラウドまでの制御システム全体をAIDに構築いただきました。このシステムは、AIが自分で判断し、水やりなどの制御を大阪・関西万博開催期間中の半年間という長期にわたってやり続けるという、世界でも類を見ない事例となりました。
この実績は、三菱電機技報(2026年1月号)にも掲載される予定であり、長期にわたるAIの判断・運用における技術的な知見や判定率などの成果を得ることができました。また、感情センサーなどの新しい機器との連携に関する実績も残すことができ、今後の他分野での応用にも繋がる知見を得られました。 


「チームで一緒に取り組む感覚」がPoCを加速させた

AIDとプロジェクトを進めてきた感想を教えてください

柴田さん

オープンイノベーション推進部として、多くのスタートアップ企業やパートナー企業と協業していますが、AID以外の企業とはここまで深く会話したことがありません。「チームで一緒に取り組んでいる感覚」が強く、一緒に頑張ろうという気持ちを共有できたことが嬉しかったです。
例えば、必要なケーブルを先回りして手配してもらったり、細かなところまで気を配って準備を進めていただいたおかげで、万博プロジェクトは大きなトラブルなくスムーズに進められたと実感しています。万博が終了してしまい、少し「AIDロス」となり、寂しいですね。

白井さん

2022年から2024年にかけて計4回のPoCを成功裏に完遂し、2025年の万博展示という大きな成果に繋げることができたのは、AIDとの協業があったからこそだと感じています。AIDは、AI技術のみならず、クラウド・通信・センサー活用等の周辺技術、さらには現場実装ノウハウも豊富で、、私たちのようなAIシステム設計・構築に詳しくない人間に対しても、具体的に提案・開発・現地設置支援までしていただける点が非常に助けになりました。問題が発生した際にも、すぐに対策案を提示し、スピーディに対応してくださるため、万博のような期限が決まったプロジェクトを推進する上で心強かったです。 


新規事業は、短期間で事業性を検証するのが大事

振り返って、新規事業創出のポイントは何でしたか?

白井さん

IGSの活動は長期化しましたが、新規事業の創出においては、短期間で事業性を検証することが非常に重要であると学びました。単に「いいね」と評価されるだけでなく、真にお金を払っていただけるお客さんにたどり着くことが必要です。短期間でPoCを実施し、見込みがない場合は、早い段階でピボット(方向転換)や撤退を判断していくべきだと学びました。

そのような観点から、やりたいことを相談ベースで受け止め、要件定義からシステム構築まで早く進められるAIDは、短期間でのPoCを数多くこなす必要がある新規事業創出にうってつけの存在だと考えています。

私たちのチームは今後も新規事業創出のためにさまざまな共創型プロジェクトを進めていくので、AIDさんとご一緒できればと思います。


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