カメラ×AIで製造工程の暗黙知を可視化し、不良率半減、生産時間10%以上短縮、電気代も大幅削減

ノザキ製菓株式会社

菓子製造・包装:チューインガム、チョコレート、キャンディなどの製造・包装事業を展開。創業以来78年以上にわたり、主に菓子製造と包装を中心に事業を展開している老舗企業である一方で、製造業向けのAI導入支援など、新たな事業領域への挑戦を進めている。

AIDによるご支援の概要

主力拠点である三重工場において、職人の暗黙知となっていた技術を見える化・形式知化するために、カメラ×AIソリューションをご提供。 

成果

  • 製品不良率を導入前の2分の1にまで減少。業界屈指の高い品質レベルを実現
  • 人間によるバラつきがなくなり、生産時間を10%以上短縮電気代も大幅に削減
  • 経験が浅い担当者でも高度な工程を担当可能になり、勤務シフトの柔軟性が向上熟練者の技術と経験を他の工程で活かせるように

代表取締役社長 野嵜伸夫さん、総務部課長 中本学さん、生産本部三重工場工場長 田中尚路さんにお話をお伺いしました。

ホームページはなくとも、長年培った技術で取引がつながるノザキ製菓

ノザキ製菓について教えてください

当社が製造しているのは、ガムやチョコレート、キャンディなどです。

ノザキ製菓は、あえて自社のホームページを持たないというユニークなポリシーを掲げています。これは、ネットを通じて広く浅く繋がるのではなく、深い信頼関係にある既存のお客様を大切にし、深く繋がれるようにするためです。

代表取締役社長 野嵜伸夫さん

リスクが大きい食品業界だからこそ、見える化が大事

製造工程が熟練者の感覚頼み、いわゆる属人化しているという課題に取り組んだのはなぜでしょうか?

食品製造業は、一度品質問題が発生すると、取引停止や企業の信用失墜に直結する、非常にリスクの高い業界です。だからこそ、製造工程の品質管理は極めて重要なのですが、長年の課題がありました。

例えば、ガムの糖衣工程は、手で触った感覚で乾燥状況や仕上がり具合を判断する、熟練の技術が求められる製造工程でした。しかも手袋を使ってのことですから、非常に研ぎ澄まされた感覚が求められます。このような技術や暗黙知は非常に価値あるものですが、いつまでもそのやり方ではダメだ、とも感じていました

技術者にとっては、それが確立したやり方、うまくいく方法ですから、変えるのはなかなか難しい。ですが、「見えないものを見えるように」していかないと、技術的に継承できませんし、昨今の人材不足にも対応できません。

熟練者の着眼点や気づきも、実は見える化し、形式知にできるのではないか。そのために、AIなどのテクノロジーを使えるのではないかと、数年前から考えていました。特に、コロナ禍で苦労した経験から、今までとは違うやり方を取り入れる必要性を強く感じるようになりました。


ものづくりの現場感覚を共有できた

なぜAIDを選んだのでしょうか?

実は、当初は別の会社さんにお願いしようと思っていましたが、その会社の注力分野が製造業ではなかったこと、またタイミングが合わなかったことから、見送りました。

そんなときに、北海道大学の教授からAIDさんをご紹介いただきました。最初にお会いしたときに、現場が好きなこと、週末も好きで物を触っていると聞き、ものづくりの現場感覚を持つ人だな、と共感しました。

最初にウチの工場に来たときのこともよく覚えています。製造工程の改善案のディスカッション中に、その場で簡単なデモアプリを作成して、「こんなんでいいんですよ」と言ってくれたのです。

世の中には、数千万や1億円を超えるような大袈裟なDXソリューションもあります。ですが、実現できるかわからない状況でまず試すなら「こんなんでいい」という感覚が必要です。そういった点も共感したポイントです。

素人にも分かりやすい説明、製造現場への理解、スピード感

当時はそこまで明確だったわけではありませんが、今から振り返るとAIDさんを選んだ理由は3つあると言えます。

1点目は、説明が明快でわかりやすかったことです。私たちにとって、AI技術は複雑でわからないことも多いですが、AIDさんは専門用語を使わずに、「こういう仕組みで、こういう効果が期待できます」とわかりやすく説明してくれました。これは、私たちのような技術者でない人間にとって非常に助かりましたし、「難しいことを簡単に説明できる」というのは、本当に理解している証拠だと思います。

2点目は、野嵜の話とも重なりますが、AIDの皆さんは製造現場が好きで、一緒にやっていけると感じられたことです。

3点目は、フットワークの軽さ、レスポンスの早さです。提案から導入、効果検証まで、「ちょっと試してみましょう」と言ってから、実際にモノが出てくるスピードが非常に速く驚かされました。さらに、「どんなパソコンを買ったらいいのか」といった本当に小さなことまで、気軽に相談できる関係性を作ってくれたことも、ありがたかったです。「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うようなことも教えてもらえるので、つい頼ってしまいます。そういう細やかなサポートが、プロジェクトをスムーズに進める上で大きな助けになりました。

総務部 課長 中本学さん

不良率が2分の1に減少し、業界で圧倒的なレベルに

カメラ×AIシステムを導入した効果を教えてください

先ほどお伝えしたガムの糖衣工程に、カメラ×AIシステムを導入しました。職人の感覚をどのようにAI化するか、何度か調整を重ね、現在は人間以上の精度で判断できるようになりました。その結果は、数字にも顕著に出ています。

当社はもともと品質管理を高い水準で実現しており、不良率は業界平均を下回る水準でした。AIシステムの導入後、もともと低かった不良率を、そこからさらに半減させることに成功しました。これは、業界でも極めて高い品質レベルだと自負しています。

生産本部 三重工場 工場長 田中尚路さん

生産時間が10%以上短縮され、電気代も大きく削減

導入の効果はそれだけではありません。生産効率も大きく改善しました。最も顕著だったのは、生産時間が10%以上短縮されたことです。

人間は判断に迷うと、作業が一瞬止まります。また、職人の感覚が優れているとは言っても、小さな誤差はあります。そういった細かな時間が蓄積して、実はムダが発生していたのです。AIが最適なタイミングを通知することでこのロスが解消され、生産時間を10%以上短縮できました。
これにともなって電気代も削減することができました。電気代が高騰する昨今、空調や乾燥に膨大なエネルギーを消費する工場において、約10%の生産時間短縮がもたらす電気代削減のインパクトは、経営面でも大きな成果となりました。

勤務体制を柔軟に組め、熟練者が他工程で活躍

さらに、熟練者でなくてもAIの判断基準に従って作業できるため、製造ラインの人員配置の柔軟性も高まりました。以前は10人程度の熟練者しか担当できなかった工程が、AIの「誘導」によって経験の浅い担当者でも安定した品質を実現できるようになったのです。

これにより、熟練者に依存した生産体制を脱却できただけでなく、彼らの高度な技術や知識を他の工程や改善活動に振り向けられるようになり、工場全体の生産性が向上しています。

私たちが目指しているのは「みんなが使えるAI」です。熟練者の気づきや暗黙知を見える化することで、少し先の未来を予測し、担当者を誘導する。AIや技術がきっかけを与え、人間に伴走する。今回のAIシステムは、まさにそういった技術の使い方が実現できていると実感しています。


「変なことをし始めた」から、調整を重ねて技術者の感覚と一致

製造現場への導入はスムーズに進みましたか?

正直に言えば、最初は現場からの抵抗がありました。社長によるトップダウンの号令でまずは進めていったのですが、現場の職人たちからは「会社が変なことをし始めたな」と冷ややかな視線を向けられることもありました。

最初は半信半疑でした。自分で触って、生地の感じ、重さを確かめて、「そろそろだな」というタイミングを判断していたので、本当にカメラでそれができるのかなと。導入初期は、乾いてきて焦るタイミングにもランプが点灯しないということがあって、「やっぱり、無理なんじゃないかな」と思いました。

でもその後、調整していただいて、徐々に作業者の感覚に近づいていきました。今では、(AIと連動している)ランプを頼りにしていますし、感覚を自分で掴みやすくなりました。ランプがつく前にも、自分で触って「そろそろつくかな」と、ランプを気にしながら作業している者もいます。AIと対話するように作業を進めるその姿は、AIが仕事を奪ったのではなく、職人の腕をさらに輝かせる「最高の相棒」になったと感じています。


食品業界全体、日本の製造業全体をAIで底上げして強くしていく

今後の展望や、AIDへ期待することを教えてください

今後は、成型ラインでのエビデンス取得(清掃や切り替え作業の可視化)や、生成AIを活用した日報の自動作成など、さらなる高度化を目指しています。

と言っても、自社だけが強くなっても意味がないと考えています。ですから、当社の成功事例をパッケージ化し、「食品業界全体、日本の製造業全体をAIで底上げして強くしていく」という展望を抱いています。AIDさんには、製造現場の課題を共に解決する強固なパートナーとしての役割を期待しています。


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