AIを活用することで、成果の質を高める時間が増え、受注につながる技術力を確立することができました

株式会社エイト日本技術開発
https://www.ejec.ej-hds.co.jp
事業内容:総合建設コンサルタント 

エイト日本技術開発は、E・Jホールディングス(東証プライム上場)の中核企業として、総合建設コンサルティングの分野で有数の技術力を誇る。全国223社を調査した日経コンストラクションによる建設コンサルタント会社ランキング(2024年決算調査)では総合8位、廃棄物分野で2位、鋼構造およびコンクリート分野で6位、土質および基礎分野で8位となっている。
社員数1,131名のうち8割が技術職(2025年6月時点)という技術者集団であり、多数の受賞実績を持つ。2025年に創立70周年を迎えた。

AIDによるご支援の概要

2021年からご支援を開始。常時1-2件のプロジェクトに関わり、交通量・人流解析、図面や文書解析、ドローン画像解析など、AIを活用した画像・動画解析技術による累積ご支援実績は10プロジェクト以上。 

成果

  • 膨大な時間をかけていた手作業・目視作業が、約100分の1で終わるようになった。
  • 建設工事による影響をすぐに検知できる技術が社内に確立できたことで、プロポーザルに対する提案力が高まった。 
  • 単純作業の時間が減り、エンジニアが「考える時間」「質を高めるための時間」を確保できるようになり、自社の強みである技術力向上につながっている
  • 若手社員が業務の効率化だけでなく、業務の高度化や新たな技術開発を提案するようになった。

目視や手作業による作業に膨大な時間と労力が掛かっていた

AIDへご依頼いただく前は、どのような課題があったのでしょうか? 

プロセスイノベーション本部ICT推進グループ課長 三上さん

当社が総合建設コンサルタントとしてプロジェクトを受注し、適切に進めるためには、発注要件を満たすことはもちろん、プロジェクト進行中の発注者からのご要望に応える必要があります

環境エネルギー事業部 副査 増原さん

土木工事を行う際には、その周辺に生息する希少な猛禽類に影響を与えていないかをモニタリングします。異常が確認された場合は、その原因を精査し、必要に応じて保全措置を検討します。従来は定点観察により巣のある樹林周辺から双眼鏡や望遠カメラ等で観察していましたが、近年では営巣木等に直接ビデオカメラを設置し、映像で猛禽類の行動を詳細に把握することができるようになりました。しかし、録画映像を目視で確認する必要があり、確認すべき録画データは6~7ヶ月分と膨大で、大変な労力が掛かっていました。  

橋梁事業部 橋ラボ 今西さん

別の例として、橋梁などの構造物を設計する際には、配筋図と呼ばれる図面を数10枚から100枚以上作成し、それらの図面に間違いがないかをチェック(照査)する必要があります。これには多くの時間と労力が必要となります。仮に1枚30分掛かるとすると、100枚あれば50時間ほど掛かることになります。しかも、この作業はプロジェクトの佳境で発生し、その間は他の仕事に支障が出ます。この時間を短くできないものかと悩んでいました。 

これらの作業は重要で確実に実施する必要がある一方で、目視や手作業が中心で、膨大な時間と労力が掛かっていました


実はすでに一度試して、失敗していた

AIDにお声がけいただいた経緯を教えてください 

三上さん

膨大な時間と労力が掛かっている作業を効率化するために、AI解析の活用を検討し、実はAIDさんではなく、他社に依頼した経緯があります。幅広く情報収集する中でその会社を知り、依頼に至りました。ところが、解析の精度が悪く、期待した成果が出なかったのです。そこで、ソラコム社へ相談したところ、AIDさんをお勧めいただき、すぐに連絡しました。2021年のことです。


やり方を教えてくれるから、自分たちで使えるようになる 

選定のポイントを教えてください

三上さん

AIDさんとの会話で特に共感したのは、AI解析をブラックボックスにせず、方法論も進捗もすべてオープンにして進める方針でした。
「ウチに任せてもらえれば、丸々全部やります」というスタンスだと、何が起きているのかが不透明になり、うまくいっても、いかなくても、その原因が把握できませんでした。

例えるなら、レストランと料理教室の違いです。以前お願いした他社さんはフランス料理店のようで、「すごい料理を出しますので全部お任せください」というアプローチ。一方で、AIDさんは、料理のやり方とコツを教えますというアプローチでした。AIDさんとの協業であれば、社内に技術やノウハウが蓄積され、改善や横展開・再現も可能になると期待し、お願いすることにしました。

実は、一部の社員からは「自分たちで手を動かすのではなく、丸ごとお願いしたい」と言われることもありますが、それでは技術の難易度もわかりませんし、社内で再現できません。技術は足し算して使っていくものと考えているので、やり方を教えてもらうのが大事です。基礎を教えてもらえるから、汎用性があり、自分たちで他の分野に応用できるようになります。 

また、AIDさんは簡単に「全部できます、やります」とは言いませんでした。うまくいくかわからないので、「とりあえず試してみましょう」というスタンスだったのです。一度失敗していたこともあり、このスタンスは当社にとって依頼しやすく、助かりました。 


作業時間が約100分の1に減った

実際にプロジェクトを進めた結果はいかがでしたか?

増原さん

ある猛禽類調査のプロジェクトでは、録画した6~7ヶ月分の動画をすべて目視で確認し、その内容を手作業で記録し、発注者へ報告していました。動画を4-6倍速で確認するとはいえ、およそ400~500時間にも及ぶ膨大な作業でした。2名がその作業に掛かり切りになってしまい、本当はやってほしい作業を依頼することができませんでした。 

AIDさんのご支援により、動画解析の精度を向上させることができたので、すべての動画を見返す必要がなくなりました。どんなに長く見積もっても数時間程度で済むようになったので、作業時間は約100分の1に減りました。その作業をしていた人は、別の仕事を進められるようになり、チーム全体の効率が大幅に改善しました。 


成果を高めるための「考える時間」を確保できるようになった

今西さん 

橋梁の分野でも同じように、作業時間が減ることで、大事な仕事に時間を使えます。AIによる図面解析によって単純エラーが削減できることに加え、作業時間を削減できたことで、エンジニアは成果の質を高めるための「考える時間」を確保できるようになります。これはエンジニア個々人の、ひいては当社全体の技術力を高めることに直結しますから、とても重要なポイントです。 

三上さん

自然環境調査のためのビデオ映像の確認も、橋梁の図面チェックも、どちらも今までのやり方を続けていては、エンジニアが作業者になってしまうという懸念がありました。

新しい技術を取り入れて今までの業務を効率化し、他のことに取り組める「考える時間」を作っていくことが重要と考えています。エンジニアは、新しいことがやれなければおもしろくないですし、非効率なやり方で仕事をさせていたら辞めてしまうかもしれない。新しいことを手掛けるべき人がそれに時間を使えるようになることは、技術で勝負する当社のような会社にとって、ものすごく大事です。 


受注につながる技術を確立できた

増原さん

技術力の向上という観点では、猛禽類調査で異変を検知した際には、リアルタイムで通知を受け取り、発注者や工事業者、専門家等の関係者へ迅速に報告する体制を整えることができました。手作業でやっていたときはどうしても映像確認から報告・保全措置までにタイムラグが生じていました。今は自動検知してすぐに通知が来ますので、迅速に関係者へ報告し、必要に応じた保全措置を講じることができます。 
この技術は非常に効果的で、実際にプロポーザルへの提案で高い得点につながっていますので、当社にとっては受注につながるような技術を得たと言えます。 


AIDは依頼しやすく、協業しやすい

三上さん

AIDさんとはマイクロソフトTeamsでつながっています。AIDさんにチャットで相談すると、「こうすればできると思います」「試してみましょう」とすぐに返してくれますし、「まずパイロット版をこう進め、それがうまくいったら、次にこうしましょう」とストーリーを提示してくれるのが、とても助かっています。特に、うまくいくかどうかわからないPoC(Proof of Concept:コンセプト検証)段階での依頼のしやすさは、AIDさんの特長だと思います。

今西さん

AIDさんは打ち合わせの場で「できる・できないのジャッジ」が早くもらえる点も良いですね。頻繁に「持ち帰ります」と言われると、なかなか進まないですし、何度も打ち合わせをするのもお互いに大変ですし、持ち帰った結果、「やっぱりできません」と言われても困りますしね。  


AI活用の取り組みが社内に広がってきた

三上さん

私の役割は「通訳」です。当社社員はもちろん、土木技術の知識は長けており、AIDさんはAI技術に長けておられます。ただ、お互いに逆の知識は乏しいのが現状です。そこで両方の知識や経験を持つ私が、齟齬なく連携できるよう「通訳」の役割を担っています。 

AIDさんから得られるAI技術を通訳して、各事業部へ展開することで、社内業務の効率化と高度化を進めることに注力しています。AIの活用事例を社内勉強会で共有することで、社内のさまざまな事業部、全国の支社から「ウチの部署のコレでもできませんか?」と、問い合わせが来るようになってきました。加速度的に、AIを活用する取り組みが社内に広がってきたと感じています。 


今後、当社へ期待することを教えてください

AIDさんは、私にとって無理難題を相談できる相手です(笑)。4年ほどのお付き合いになりますが、社内からAI活用についての問い合わせや相談を受けると、「こんなことやりたいんですけど、できますか」と相談しています。近々、また1件お願いすることになりそうですし、これからも「困ったとき」ではなく、本当に困る前の「ちょっとイマイチ」くらいの段階で相談していきたいと思っています。


  • 本文中の部署名・役職などは、取材時の内容であり、現在のものとは異なる場合があります。
  • 記載された社名および商品名などは、それぞれ各社の商標または登録商標です。